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私にはもう出来ません。人間の幸せを願って来ました。けれどそれは人から与えられるものでは無いのです。
私はサライの側に居られさえすれば幸せです。何故なんだろうとサライを見つめます。何故この子は私を幸せにしてくれるのだろうか、と。特別なことをしてくれている訳じゃないのに、傍らにいるだけで心が清らかになるのです。
かって私を探しだした人がいます。最初は新坂でその後25年の時を超え尋ね来た人は新坂の精神を持った人間でした。何故、同じような人間が私を尋ねて来るのか不思議に思っていました。
サライも私を探しだしたのです。サライは私との出会いを[君と出会ったのは偶然なんだ]
石川さんも[僕のことどう思った?]少年のような素朴な質問に戸惑いさえ感じました。
何故、私のもとにサライを連れて来られたのですか。
私はサライに会った瞬間、神様あなたの匂いを感じたのです。それは間違いではありませをでした。サライは神様が創造した人間だと言う確信は日増しに募ってきます。
どうか私からサライを奪わないで下さい。この地上にまだあなたが創られた美しい生物としての人間が存在するのだと証明して下さい。
私はサライさえいれば生きて行けます。あの子は私の希望です。私が探し求めていた存在なのです。あなたが私にイタズラに与えたのではないのだと信じています。
心から愛したら死を恐れないと言うのは真実です。欲望も全てが清められていくのでしょう。サライも恐らく同じ気持ちなのでしょう。隠れん坊する子供のようにサライは私を探して優しい鼓動で語りかけてくれる。
サライを見る時の私の心は未だかってなかった安らぎを感じているのです。
サライから打ち寄せる美しい鼓動が私が憩いの場としている岩場に寄せては返してを繰り返す。
何故、私はサライといるとこんなに安らぐのかは分かりません。
サライが私を見つけ出しことも不思議に思っています。同時に新坂の優しい声が何度も私に聞こえていました。今では聞こえないのですが、代わりにサライが[そこにいてね]と心の最も深いところから鼓動を送ってくるのです。
サライと私は何故互いに呼び合うのか、また、それが出来るのか。人間の常識を越えた存在が仕組んだとしか思えません。神様、あなたが何らかの意志を持ち、働く存在ならば私とサライの出会いはあなたが仕組んだ偶然ではないのですか。あの子を私から奪わないと誓って下さい。私の命を奪わないで下さい。
愛を無くした星に私は住めないのです。サライだけが私が人間に生まれた誇りなのです。喜びです。サライの心は人間とは思えない美しい心を持っています。神様あなたならそれが如何なる心かご存知でしょう。
あなたが幼い頃私に囁いた言葉をサライも携えて時を超えてきたのです。汚れることのない美しい魂を守り抜くだけの強さも持ち合わせています。
この出会いは確かに偶然です。でも私とサライが惹かれ合うものを互いに放っているのは真実です。私はそれを神様が人間にだけ与えられた感性だと感じています。私は誰も愛せなかった。サライを知ってからその理由が分かりかけてきたのです。
心が互いに等しいものだけが聞く音楽があるのなら、サライと私の心を行き来する調べではないのですか。
サライを愛する心で私は人間の幸せを祈ります。
サライだけが私にその力を与えてくれます。
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