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私は神様を愛していた。私を苦しみに会わされた時も私は愛していた。
優しいあなたが私を意味も無く苦しめたりはしないのだと。
人は相手が自分を愛しているかを気にかけるのだが、私は私が愛しているかどうかを胸に、心に問いかける。
愛していると言う答が返ってきたなら、黙って自分の心に従う。
恐らく、新坂が私を愛していたようにだと思う。その姿勢は穏やかで、ただ見守っているだけにしか見えないのだろう。情熱のない揺るがぬ愛は静かだ。
生まれたからには生きねばならないと私は思う。
私の心が誰かを愛したなら愛さねば、私は私の心を欺くことになる。他人に嘘をついたとて苦しくはないが、自分の心に嘘はつけない。
[愛している]そうとしか言葉には出来なかった。
姿の見えない存在に神様と名前をつけたように、私の心から溢れる思いに[愛している]と言う言葉を託した。
それは決意に過ぎない。証明する為には行動しかないのだと思う。
言葉で言うだけなら容易い。私にとって愛していると言う言葉は様々な内容を含んでいる。
時には冗談でその場限りのリップサービスであったり、面倒くさいから適当に歯触りのいい言葉として提供する。
それが真実かどうかは言葉の後に如何なる行動が伴うかでしかない。
賢い人なら言葉など鵜呑みにしない。私もそうだが、言葉は嘘半分、真実半分で聞いている。
いずれにするかは行動だと思う。
新坂は行動で示す人間だった。彼の行動は私への優しい気遣いと思いやりに満ちていた。
私が彼の横に並べなかったのは彼に恥ずかしい思いをさせたくなかったんだと思う。その気持ちに気づいていたのかも知れない。
そして、そんな私だからこそ新坂は愛していたのかも知れない。[あなたを辱めたくない]
背中にソッと手を差し出した時、私は許されているように感じていた。
あなたの側にいることを許されたのだと。
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