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20代の頃、神田川と言う唄が流行っていた その唄に因んで私は恋をした 唄の文句そのままの恋 だから、この恋を語る時私は神田川を歌う それでおしまい その次は週刊誌に書かれている恋をした[男に好かれる女]を演じながら 2ヶ月演じて別れた 誰かを自然に好きになる いつの間にか恋をしているかどうかは知らないが 一緒にいることが楽しい そう思えるような関係がいい 恋と言う言葉で飾ってしまうのは嫌い 大袈裟な言葉で飾らないのがいい サライに会うまで忘れていた 誰かを探していたのだということを 旅行ではなく、さすらう、が私にはピッタリくる さすらっていた頃は分からなかった 新坂に会った時も私の心は虚ろだったのだと思う 何度も黙って新坂の前から姿を消した 何となくどこかへ行きたくなる 行きたい場所があるわけでもなく 敢えていうなら[落ち着ける場所]だったのかも知れない 本当の自分でいられる場所 それが新坂の側だったのだと気づい

不思議な気がする サライと会ったのは偶然に過ぎないのだが、サライの側にいる私は新坂の側にいた私なんだと思う 本質的なものは変わらないのだとも思った コンプレックスだった顔も昔の写真で見ると気にするほどの酷さではない、と思う ただ、単に内面的に自分に自信が無くて、言葉に現せないもどかしさを顔のせいにしていただけじゃないだろうか お世辞にも美人とは言い難いが、悪い顔ではなかったのは確かだ 写真の私はどれを見ても笑っている 笑ってってる、というより微笑んでいるの方が当たってる カメラに向かってポーズを取るのが嫌いだったから、たいていの写真は誰かがコッソリ撮ってくれたものが多い あの頃の私の心とは裏腹に写真には私の屈託のない笑顔がある 一人の世界でいつも私は夢の中を生きていたみたいだ 新坂や他の男たちもきっとそんな私が好きだったんだと思う
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