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私は初めっから人生に大袈裟なものは望んではいなかった だから、札幌で新坂と会った時も野良猫のように新坂と過ごせた それが私にとっての人間関係の理想だったのかも知れない 何かに縛られるのが嫌で自由な人を探していた だからと言ってだらしない人は嫌いだった、にも関わらず、一番嫌いなタイプを選んだ理由を考えると、自由とだらしないは似てるんだ 自由に生きるって凄い覚悟がいるような気がする 覚悟のない人はだらしないだけだ 現実を淡々と生きて楽しめる人 執着しないのがいい どこかでいつも死を意識しているのだと思う
サライと会った最初の頃、私が[長生きには興味ないの]投げ捨てるように言った言葉が時折頭をかすめる サライの返事も即答だった 常日頃の生き様みたいなものは自然に出てくる 短い人生だもの 楽しんで生きたい それが私の本心だった でも嫌いな人と暮らしていたら楽しむどころじゃない、とも思った 新坂もそうだが、私は独り言のように言葉を発する 誰に言うでもなく まるで虚空に泡を吐き出すようにボソッと それを上手くキャッチしてくれる人が新坂であり、サライなんだと思う サライと私がボソッと呟いた言葉が空中で一つの世界になる サライに会った最初の頃から私は感じていた[サライと私なら体を合わせなくてもセックスできるね]と 互いが放つエネルギーが空中で一つになる そんな時に感じる世界が私は好きだったんだと思う 新坂はそんな私の癖を知っていたからベタベタしなかったんだろう 心の中から泡のように出てくる柔らかいものが空中で誰かさんの心と合体する 多分、孤独な人だけが行き場の
ない思いを泡のように吐き出してるんだと思う 別の表現をするなら、孤独に凍えた心が熱を発しているのかも知れない 口に出せず身悶えしながら命を燃やし、自らを暖めようともがいてるみたいだ 誰でも寂しいんだと思う でも心が違う そう思う時がある 肉体を離れて空中でセックスできる相手はそんなにはいない 拷問にあっても自分らしさを失わない人だけが孤独な世界の住人になれるのかも そんな気がする 新坂も石川さんもサライも似たような性格だったから
この現実に私も生きている だけど、もう一つの世界が私の本当の生だとも思ってる 孤独な私だけの生 そんな世界を持った二人が出会い現実を支え合ってる
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