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我が家には朝から人がたむろしていた。昔で言う所の井戸端会議場みたいなものだ。誰彼と無く自然に人が集まってくるのが私の特徴なんだろう。
寂しがり屋の私からは人恋しさが放たれていたのか、その割には一人でいる方が好きだったんだが。自宅の隣で小さなブティックを経営していて、来客の殆どはお客様。
高価な服を買って頂く為にはある程度機嫌も取る。邪険に扱う訳には行かなかったのだが、客の殆どは自分の意志を持っていないように思えた。
気分良くさえさせてくれたら、高価な服にも惜しげなく金を払う。私はこんな客が嫌いでもあった。朝から来て夕方まで動かない客の殆どが寂しいのだと感じていた。
我が家のようにくつろげる場所に人は集まって来る。だが、私は彼女たちの会話に入る気にはならなかった。いくら高価なファションに身を包んでいても内容のない人間との会話は虚しいと心の中で呟いていた。
チャラチャラ着飾るより、もっと素敵になれる可能性がある。安いTシャツを粋に着こなすそんなファションが私は好きだ。
それを可能にしているのは生きる姿勢に思えた。
寂しさにも耐える強さがないと素敵な生き方は出来ないのだとも思う。日々、闘いだとも思っている。愚痴を言わない、テキパキ動く、言い訳をしない、いつまでも同じことに拘らない。
自分に課した課題は出来る限り守りたい。しかし、これらを私に教えてくれたのは私が会った素敵な人からだ。彼らの姿勢を何気なく取り入れているうちに心情までが分かるような気がする。
背筋を真っ直ぐ伸ばして立つ時、石川さんの生き様が自分の内部で描かれていく。(あー彼はこんな気持ちで生きてきたんだ)
人は鏡だ。毅然とした姿勢で生きていたい。私と石川さんは短い付き合いではあったが、それだけで十分彼の生き様を知ることができた。
会わなくなって随分時が過ぎたのだが、今でも彼の姿勢だけは脳裏に焼き付いている。
私のものにしたい。あなたの生き様を。
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