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(サライ…)無言の瞳を投げかけると(俺…)と言いかけて口をつぐんでしまう 私は未だにサライと言う人間がこの世界に実際にいるのだとは信じれない時がある サライと逢う前に私がいた世界はガラクタで埋まったように雑然とした感じだった そう言う世界を離れて違う世界があるのだとは信じれなかったのだが、いずれ自分はそこに行かざるを得ない運命のようなものを感じ、寂しいような気持ちに襲われたー欲望や快楽より美しくシンプルな幸せがあるのだと言う予感だけはあったがー
その予感は詩となり私の手元にある
[もっとも豊かな王国への旅 これが最後の旅 さすらいの最後の旅 王国の門をくぐると、生きとし生けるものの全てが音も無く、音を描く 静止しているようで豊かに生きている かってこれほど、静かに激しく かってこれほど豊かに感じたことがあったろうか
全てが目覚めていく]
これを書いた時、私は社会で欲望に振り回されそれを快感にすら感じていた 売春婦のような女に入れあげヘトヘトに這いつくばっている惨めな姿にも気づかずにいた 溺れる…と言う表現がピタリとするようなそんな世界で我を忘れていただけに過ぎない
[もう嫌だ!]どこかからか悲鳴のような叫びが聞こえていても知らん顔をしていた そう言う風に日々を過ごしていてもやはり人は自分が生まれた故郷を忘れてはいないのかも知れない 激しく打ち寄せる思いと思いがしぶきになり砕け散る そんな自然の営みにも似た光景がある日広がる 外界とは何の関わりももたない人と人の心に繰り広げられる愛の物語りは誰にも知られず世界を描いていく 二人の人間の間にはピンと張り詰めた琴線があるかのような世界 心の琴線に触れる瞬間がある 孤独な人特有の世界は緊張感に包まれている 人が踏み込みことを許さない世界が個の中にはある
互いが奏でる懐かしい音色に心奪われていく 孤独と言う名の美しい王国 私がもっとも恐れていた孤独はサライと言う少年を連れてきた 恐らく孤独な人は世界中に大勢いるんだと思う 老人ホームにもいる 何かが違うとしたら音色を奏でる琴線の違いに思う
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