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腹違いの弟は実家に帰り、間もなく自殺した 父は何故、弟が自殺したのかその理由すら知らないで他界した 知りたく無かったんだと思う 知ったなら自分に多くの責任が降りかかってくるのだと無意識に感じていたのだと思う 心はその人の過ちを決して見逃さない裁きの番人でもある 心は人間の全体性と関係していて、父が犯した罪は晩年ノイローゼとなり、姿を現した 自分が犯した罪を認める強さのない父はただ、ひたすら宗教にはまり、祈る日々が続いた
人間の未熟さが生み出す悲劇がある 私が父のところに引き取られ感じたものがある 私は途中から父と合流したお陰で父をある程度客観的に見ていたのだと思う 現実的には父として、認識はしていたのだが、根本では否定している存在がいた 産まれた時から一緒にいると、悲劇しか招かない環境にすら人は適応してしまう オマケに悲惨な現実に愛着すら覚えるのだろう
今、私はあの頃の光景を遠い世界のように感じているが、父が死んでも消えない遺産がある 父と同じ過ちを犯している人は巷に溢れている 父の口癖は[医者になれ]に尽きる その根底にあるのは社会からの是認であろう 心と言う見えない器官は不思議なもんだ 耳も無く、目もなく、足もなく、手もなく全てを備えている
見えない人格を構成する必要な素材の一切が心には備わっている 父のすべきことは酒で誤魔化すことでは無く、心の囁きに耳を傾けることだったのだろうが、そこから聞こえる声は父を責めるように聞こえたのかも知れない 私の心は呟く[愛する人に相応しくありたい]
無意識のうちに人は愛する者と等しい姿になる 父の姿は弟の自殺を通し語られている 私は近々、この家を離れる予定でいる もっと早く決断すべきだったと悔やまれるのだが、無意識のうちに私自身も絶望していたのかも知れない 孤独は誰だって嫌だ だが、ここにいても孤独を感じるなら意味はない、に行き着いてしまった 決断したもう一つの理由がある それはサライの存在 (愛することを諦めないで)サライからそんな勇気をもらったように思う 同じ死に場所でも心から愛する人の側で…と願う私の心がある
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