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サライ、君の欲望はにいざかに似ている。私には全く記憶がないのが残念なんだが、もし私がにいざかの欲望を認めていたなら別れることは無かったのだと悔やまれる。
愛する者に対する性的欲望が私にもあるのだと自覚したのはサライに逢ってからなんだと思う。
にいざかは私を抱きながら罪の意識を持っていたのではないだろうかと思われてならない。
サライは私の側にいる時、冷静を装ってはいても隠しきれない欲望に苦しんでいるようにも思えた。その度ににいざかを思う私がいた。
記憶から消えていたのはにいざかに罪の意識を持たせたくなかったのかも知れない。無意識にせよ私はにいざかを愛していたから、苦しむ姿を見たくなくって、何も無かったように振る舞っているうちに記憶そのものが消えたのだと思う。
恐怖と欲望が私から大切な人を奪い続けてきた。サライ、君も恐怖と欲望の狭間に苦しむのだろうか。にいざかと過ごした夜はただ終わった後ににいざかがセックスの痕跡を消すように窓を少し開け空気を入れ換えていた姿だけ。そして何事も無かったようににいざかは私を抱きかかえるように寄り添い眠っている姿は今でも夢のように優しい時間に思える。
本気なら欲望が湧いてきて当たり前なんだろうなぁと最近感じる。そのことに対して恐怖を感じるのは愛しているからであったのだと知った。にいざかからは一度も愛してると言った類の言葉は無かった。今なら、その愛が深ければ深いほど沈黙するしかないのだと私は知っている。欲望と恐怖が人々を縛り付けてしまうのだと…
サライ、私は君を愛した時、死ぬかもと予感した。だが、その死は私を別の意識へと導いてくれた。古びた意識が死に新たな認識が私の中に芽吹いた時私は今までの自分が拘っていた意識は私の牢獄でそこに捕らわれ身動きの取れない囚人に等しかった。
欲望と恐怖が人間から自由を奪う。それらは意識、自意識とも言うのだろう。
人は常に何らかの意識にしがみついている。その姿は棺桶にしがみつくようなものにも思える。
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