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のどかな時間に歩いて来た道をふっと振り返る スケッチブックを開きながら、随分前に描いたイラストを見る
我ながらいい雰囲気の絵を描いていたんだなぁとしみじみ思う
これ描いていた頃は喫茶店を経営していたんだ 客のいない店内のカウンターで絵や独り言のような文章を書いていた 誰にも私のもう一つの顔は受け入れてはもらえなかったからなのか、店での私はいつも笑顔だった 商売用の顔だな たまに店以外で偶然私を見た人は別人のようだったと評していたっけ 誰もうっとおしい顔なんぞ見たくはないもんだ
辛い時、鏡に向かって微笑む いつまでこんな道化芝居をやってやきゃならんのだろう そう思う
生きる為よ 何の為にだ 自問自答が出口のない迷路を巡る そうだね 今ならこの世界に愛する人がいるからよと答えられる 生活の虚しさから始めた商売だったのかも知れない ただ動いているだけで虚しさから解放されていたのか、ただ単に考えずにすむからだったのかどっちでもいいのだが
あの頃、よくゲーテの詩を読んでいた 読みながらゲーテの心になれたなら世界は輝いて見えるんだろうなぁと想ったりした 感情移入が人間には出来る 本もそうだが人に対しても感情移入することで共感したりするもするのだが、嫌な感情にはあまり立ち入りたくはないと言うのもある 昔は闇雲に誰彼なく感情移入し自分の感情が希薄になっていた頃がある そこまで行くと喪失感でしかない
店を閉店する少し前から無気力になり、開店時間を気にしながら厨房でボンヤリとした時間を過ごしていた どうにも体と気持ちが足並みを揃えてはくれなんだ トコトン追い込まれた時、私自身を振り返った あの頃の私の価値観は他人、若しくは世間の価値観の受け売りでしか物事を考えていなかったたんだと思う 自分自身が良いと思うものは何一つない 辛うじて絵や文章を書くことくらいだったのかも知れない 本当はノンビリと生きていたかったのかも知れないのだが許されない現実が私を追い立てるように現れた
今更、触れたくはない事柄がある やっと処刑台の階段一歩手前で逃げ出したのに再び[帰れ!]と言われている気分になるから記憶から薄れるまで少し時間が欲しいと思っている こんな風にノンビリしている暇など本当はないのだが、心の中で(許して欲しい…)と懇願している
大それた望みなんか私には無かった ただ思いやりに満ちた人間関係を築きたかっただけでしかない 私は最近やたらいろんな人に吠えまくっている [人間なら人間らしい教養くらい身につけろよな!] 教育と教養は明らかに違う代物だ 教養は人から人へと愛を通り伝達する 血肉になったものが教養に思える
人間に生まれた私はやはり人間から愛されたい
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