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芸術家は家族を不幸にする…サライの言葉なんだが、多分ね自分が幸せでないからなんだ。
昔のCMで[幸せってなんだっけ、なんだっけキッコーマンのある家さ]ってのがあってね、それ作った人、自分が幸せでないのに幸せの歌なんか作れないって言って死んじゃった。正直な人なんだなぁと思ったんだ。私はこの世界を見ているだけで関わっている気はないんだ。だからかな、何とか生き長らえているようなところがある。どぶ川に浸かる気にはならない。最近、私も思うよ。サライと同じで有名になったり何かになるのもいいけど、愛する人と一緒が一番の幸せなんだと…サライに逢うまで忘れていた。
私はそれだけを探して来たたのにいつの間にか道を外れていた。愛されたいって言葉にするのが恥ずかしくなっていたのかも知れない。
サライの素直な思いに触れて気がついた。多分、新坂と居た頃の私はそう言う素直さがあったんだと思う。
芸術家になるより芸術そのものになるのがいいね。世界に一人しかいない人間になるのがいい。
[君は僕だけの人なんだ…僕だけのために生まれて来たんだ]サライの側にいたらそんな呟きが聞こえてきていた。
それは私にではないのかも知れないのだが、サライがそう言う人を探しているのだけは伝わっていた。(愛の妖精)をね。愛にもいろいろあるから、愛の形みたいなものかな。それがうまく噛み合わないんだ。
サライに会ってから次第に自分が見えてきた。人に逢う度にサライとは違うんだなぁとしか思わなくなっている。
何が違うのかは薄々分かっているのだが、とても単純なことなのにいないんだね。ただ、心の美しい人、それだけの願いなのにいない。
ぐるぐる回って結局サライのところに帰って来て、何でサライなんだろうとか考えるのだが、理由も何も見つからず、考えるのを止めてしまう。
理屈が通じない気持ちかな。サライのような心を持った人間はいない。それが結論。どこにでもいそうな気がするのにいない。
心の美しい人を探すのがこんなに大変なことなんだとは思わなかった。何故、サライがそれを保持できたのかもだ。
仕事場でサライを思う心で接すると伝わるんだ。その度に心が美しいことは装飾品を身に付けるより素晴らしいのだと思う。
サライ、私やはり後悔している。言い訳をする気にはならないけど、サライの前で他の人と親しげにするべきではなかったんだと。
孤独な人が人一倍独占的が強く、失うことを何より恐れているのだと認識すべきだった。
多分、もう誰も愛せない。サライを愛したようには愛せない。諦めるしかないのだと思うと死んでしまいたくなる。
求める人の気持ちは切ないほど感じている。だけどサライとは違う。気の多い私にとってサライは神様がくれた船の錨みたいなもんかな。
孤独な人にしか与えられない最高の運命があるのだと思う。それはサライや新坂、石川さんに巡り会えた幸せだ。
幸せって何だっけ!何だっけ!
君に出会えたってことさ。
神様が与えた才能があるなら、それは独り占めにしてはいけないのだと思っている。多くのアーティストが最後に人々に分け与えるのは極自然な成り行きなんだ。
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