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泣けるほど悲しくなれるのは幸せなんだ。プチを忘れないのはプチが私を好きだったからなんだなぁ。小さな命でも愛情は大きいんだなぁ。自分の中でプチの存在を思う度に、もういないんだ、と悲しくなるけど、そう言う気持ちが持てるって幸せだと思った。
大切な私の感情[ここにいて]と私の手を引く、心を引き留める。
昨日は一日中新坂を思い出していた。
そう言う日もいい。思い出とデートしてる気分だね。
新坂、私ね、新坂とセックスしていた時のこと何も覚えてないんだよ。まるで何も無かったみたいに。他のことは覚えているのに、そこだけ記憶から消えている。優しかったのだけは覚えてるよ。大事に扱うってのはおかしいかも知れないが、実際そうなんだ。もう一度、あの時に帰れたら、新坂の優しさを感じながら[抱かれている]って感覚を味わえたのかもね。硬直したマグロじゃなくて。
今、思うと、新坂はセックスの度に[ごめんね、ごめんね]
そんな風に言ってた気がする。私がチッとも楽しそうじゃなかったからだと思う。でも欲望の対象とは見てないのは分かっていた。セックスの前は覚えてないけど、終わった後[大丈夫?]って聞いているようだった。
新坂が本当に好きだったんだと思う。
私は心から好きな人にしか物語りはプレゼントしないから。私の大切な世界は愛する人にしか扉を開かないんだ。
今ね、私は一人でいても寂しくはないんだよ。新坂といた頃は寂しくて、私をほっといて勉強している新坂がキライだった。何時も側にいてくれない新坂がキライだった。
今なら分かるよ。
生きていかなきゃいけないんだから。そう言う面倒なこと黙って実行していたんだと今なら分かる。でも遅いや。気づいたっていない。
いないけど忘れていない私がいる。人間として新坂のような人から大切に、大事に扱われたことは永遠を共に過ごすことより美しい時間だったんだとは言える。私が15年前に書いた詩は新坂の鼓動だったと今更ながら思う。抜粋しておきます[言葉を重ね、手を重ね、体を重ね、鼓動を重ね]この後一つあるんだけど、届かなかった。[心を重ね]心だけは重ねられなかった。
あれから私は随分変わった。新坂の優しさが分かるようになった。私が感じている優しさが本物なんだ。書物なんて当てにならない。ゲーテは別だけど。
新坂が私を抱いている間私は何を考えていたのだろう。覚えてないんだ。
でもね、新坂が好きだったから新坂が求めるものを与えたかったってのは本心だよ。新坂もそれを気づいていたから、終わった後、心配そうな顔してたんじゃないかなぁ。そんなとこだけ覚えている。
時間があると、いろんな所に連れて行ってくれたのも、奪うばかりじゃなく与えたいとも思ってたんだ。交換条件じゃなく、[君が喜ぶこと]と[僕が求めること]のズレを埋めようとしてくれていた。
人間性の重要性がしみじみ分かるんだ。体だけ抱いても心を捕まえられなかったら意味ないんだよ。まっどっちも捕まえられないよりかはましだけどね。
分かったことは忘れていないんだよってことかな。あーちゃんと覚えていたぁー。なんだね。
気持ちや心を受け取り損なっちゃいけないって焦りもあったんかな。
心は移ろいやすい。扉を開いて[まだ愛してる?]確かめないと消えていくんだ。疑うこととは違うんだよ。愛してるから確かめたくなるだけ。子供のように[おかあさんどこ!]ここにいるよ、って返事があったら安心するんだね。
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