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生まれてから一度も女であったことがなかった 否、女になれなかったが正解だろう 新坂の時、私は子供として愛されていた 新坂もそれを承知していたはずだ 男には汚れのない子供を育てて自分の理想の女にしたいと思う気持ちがある あの頃の新坂を思い出すと強引ではなかったがそれとなく感じていた私がいる 新坂の理想の女…その女はサライが密かに胸に抱きしめている女だった 皮肉だね 長い年月を過ぎて新坂が望んでいた女は新坂とよく似た人に出会った サライにあった時、と言うよりサライのことも知らなかった頃どこからか[帰っておいで]と言うような言葉を超えた訴えのような感覚があった サライを実際に見たのはその後で、それ以来[帰っておいで]は聞こえなくなってしまったのだが、新坂に対して女にはなれなかった私の無念なのか新坂の無念なのか、どっちかは知らないのだが、サライといると私は昔の私でありながら一人の男を切ないほどに愛している女の私に目覚める 新坂とサライの間には不思議な繋がりがある 変わったのは私だけで私
を愛した人は少しも変わってはいない
新坂、女っていいね 初めてそう思えた 多分、愛すると愛されるは同じなんだ互いが相手を思い努力すると言う点においては 受け取ると与えるのバランスが男と女にあれば互いに浸透しあうものなんだろうね いわばキャッチボールしているようなものかな 男と女のバランスがうまく取れて初めて穏やかで生き生きとした日常があるのかも知れない
恋愛には興味がなかったけど、男と女がつくる物語は芸術そのものにも思える
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