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炎天下の中を仕事を探し走り回った。
そのせいだろうか。体が異様に熱く瞼は重く死の口づけを受けたように生気を失っていた。
帰りに図書館に寄りシェクスピァの本を一冊借りたのだが、読む気にならない。多分、空腹に喘ぐ人間にも言葉は虚しいのだと思う。
今日のような日はマザーの言葉も届かない。私は疲れきっていた。
家に帰るとそのまま眠りに落ちた。
どうかもう目覚めることがないようにと祈りつつ。神がいるなら私を愛して下さるのなら、死こそがこの心に相応しいように思えた。
言葉では救えない世界にいる者がいるのだとは知っている。飢えている人にとっては食物が救いになる。
言葉の限界はいつも感じている。虚しくさえ感じる時がある。こんなに豊かになり、学ぶ余裕があっても人は学びはしない。
一体誰の為に書物があるのだろう。ゴッホは何の為に芸術にその身を捧げたのだろう。
ゴッホと名前が付いただけで崇められ高値がつけられる。それだけの価値の為にゴッホは炎に焼かれたのだろうか。
ゴッホの書物の中に[君は牢獄を消滅させるものが何であるか知ってるか。それは深くて真面目な愛なのだ。兄弟であること友人であること。それらの非常に強い魔力に寄って牢獄の扉は開かれるのだ]
この言葉が私の胸を打つのだが、言葉にする気にはならない。そんな雰囲気のある国じゃない。
先日、ファミレスで若い子が二人、椅子の上に足を放り投げ肘をつき喋っていた。行儀が悪いと言うレベルではない。
何か大切なものを忘れているように感じた。
あらゆる絶望感と疲労が私から希望を剥ぎ取っていく。これ以上行けば私も化け物になる。自分が弱い人間であることは誰よりも知っている。だが、人間として生まれたからには、人間を保持する限界がある。
炎天下に焼き尽くされた私にはもう歩くだけの力はないと感じた。
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