祈り

マザーテレサには夢があったのだろうか。ビィクトル、フランクルは収容所で夢を持っていたのだろうか。私にも夢は無かった。夢を見れる程私の子供時代は優しくはなかったからだ。食べ物に飢え、寝る所を探す。会話はなく、何時しか言葉を忘れてしまった。何が悲しいのか解らず悲しい気分だけが満ちていた。泣く事も忘れていた。感情が消えていく辛さって、その時は気がつかない。ある時、空虚なやりきれなさで気がつくのだ。私には夢はないかも知れないが、喜びがある。人と過ごす穏やかな時間。それを夢とは言えないのだろうな。何かになりたいと言う目標が夢なんだろうか。私は一度死んだ人間だから、生きていると感じられる時だけでいい。心ある人間といるだけでいい。夢と言えるものが私にあるなら、絶望の最中で祈りだけが残された人がいる。奇跡は祈る者のもとを訪れる。そうであって欲しい。夢を見れる位優しい一時があって欲しい。それが私の夢。