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札幌にいた頃、教会の門を叩いた だが、その日、教会は休みだったのか、門は固く閉ざされ私は拒まれたような気持ちでその場を立ち去った 恋人もいた 苦しい思いを打ち明けることも出来たであろうが、何に自分が苦しんでいるのかが分からなかった
あの頃、コンピューターがめざましい進化を遂げつつあった コンピューターが私のグチャグチャになった脳をそのまま何らかの形に取り出してくれたなら、と思っていた 言葉にならない思いに私は常にに苦しんでいたのだと思う
誘われるがままに宗教を聞きにいったが、話を聞きながら、心のどこかで(これじゃない…)そう思ったのだけ覚えている 彼らの言葉に反論はしなかった 私には言葉が見つからなかったのだが(違う!)と言う確信だけは強かった 私が探しているものではない
宗教に救いを求めなくなってから、様々な書物を読みあさるようになった 実際に私と似たような精神的苦痛と地図のない道を歩いた者だけが少しの間安らがせてくれた 恐らく、宗教を説いて歩く多くの人は、あの過酷な道を歩いてはいないのだ 歩いた者だけが知ってる茨の道がある
現実の生活とは無関係な苦しみが内面で起きる 現実に関連した悩みなら、誰かに相談も出来るのだが、誰にも相談出来ず、言葉すら浮かんでは来なかった
書物を読む時も思う 摩訶不思議な言葉の言い回しに(あ、この人は知ってるのだ)と 私に向けて語られた言葉より、説明の出来ない道の至る所で出会った光景を感じる時、自分が見た光景は夢ではないのだと安心した 現実を生きながら、なお、もうひとつの見えない世界を生きるには道化役者になるしかなかった
私には今、心から愛する人がいる だが、それとてこの過酷な道を歩いた[記し]を彼の中に見たからに他ならない それが私の勘違いであったなら愛したりはしなかったと思う
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