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神殿は何処にあるのか、と聞かれたら、応えてあげるといい。幼い頃、置き去りにした暗い森の中にあると。其処に行くにはどう行けば良いかと、問うであろう。 道などありはしない。君の感性に導かれ、月灯りのもと、歩くといい。神殿は未来と言う空間で君を待っている


幼い日、暗い森の中で、月を見ていた。月も私だけを見ていた。月と隠れんぼしたが、月は何時も私を見ていたから、何処に隠れても無駄だった。本当はそれが嬉しかったのだけど。 子供の生命力は純粋が故に強い。 大人になって(何をさして大人と言うのか解らないが)あの頃の強さに憧れる。戸惑いつつも従っていた愛。疑いつつ従わざるを得なかった愛。生きたい!それだけが小さな心に根ざしていた。幼い心を知り、許してくれた月よ。[行きなさい。それも愛なのだから]暗い夜にかすかな道しるべとなり、大地を照らしてくれた月よ。あらゆる愛を通り抜けた事を知ったのは随分後だった。 もし、私が人間ならば、貴方のような人間になりたい。 山の裾野に小さな小さな小屋があった。窓は開け放たれ小鳥が出たり入ったり、いったい誰が住んでるのだろう。明るい静けさと聞いた事もない音楽が音もなく奏でている。好奇心の強い私は小屋に入っていった。其処には手塚治虫の顔をした神様がいた。かって幼い日の私が苦境の最中で止むに得ず祈りに近い気持ちで創造した神がいた。何時の間に
か私の神は手塚治虫という人間の姿を借りた存在へと変わっていた。あまりの嬉しさに我を忘れ寝そべってる犬をふみつけて、驚かせてしまった。 今まで何人の人が道に迷いこの森に入って来たのだろう。神はその事を知っていた。山の裾野で迷子になりやってくる者を拒みはしなかった。 手塚先生貴方があの時言われた言葉を胸に今日まで生きて来ました。人間へと通じる言葉に導かれているとも知らず。 真実を知る者の嘘は誠へと姿を変えていく力を持っているのですね。 人々が神と呼ぶ者のもうひとつの名前は愛であるのでしょ。隠しても駄目。見付けたの。幼い日、月が教えてくれた秘密を。
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