死に装束に笑顔を添えて

傷付けた人にしか癒せないなら自らを傷付けるしかあるまい。私はせっかちだから治るまで待っていられない。
中途半端な傷は余計悪化し、下手したら心まで浸食しかねない。ならばと腹をかっさばいた方が手っ取り早い。傷口も鋭利な刃物でかっさばいた方が治りは早い。鈍刀ではただ疼くばかりで余計苦しい。急激な痛みに対しては脳内から快楽物質が放出され痛みを和らげる効果がある。
出来たらしたくはないんだが、煮え切らない相手を前にはこれしかない。そう思ったんだなぁ。殺す勇気も守る勇気もない事を分かってもらいたくて、自らの心臓を抉る。
私が抉ったのは案外相手の心だったのではないかと自身の行為を振り返る。
私は少しも傷ついてはいないからだ。
傷つくのを恐れている相手に対して自らを傷付けるのは効果がある。但し、これも相手次第だ。傷つくなんて発想すらない奴を相手に腹をかっさばいたりはしない。