慰め

私を励まし続けたものは苦境の中で毅然と生きた人々や辛い宿命を背負った人々であった。何の因果か自分より苦しい環境で生きた人を身じかに感じた。人には見る方向の癖がある。自分の視点からぐるりと世界を見渡し、最終的に私が選びとったものは一番最初の感動、愛の妖精のコオロギと言う少女の生き方。それが私の原点だ。共感出来るものに人は惹かれる。自身の中に欠片があるなら、分身を求めるように内面的な世界を補うようにさ迷う。 理解出来るからに他ならない。語らずとも理解出来る心地よさは人の心の故郷だ。苦しくとも愛してしまう不可解な心理だろう。恐れながらも惹かれていく衝動。 損得の感情は多少あったとしても、強い衝動は自己完成の道を歩むように思う。私の人間としての恐れや幸せには興味がないのだろう。私自身でさえ分からないものに導かれ生きて来た。幼い日の私は何処に行くかさえ気にもかけず追い掛けたように思う。愛するものと離れまいと必死だったとしか言えない。 人はパンのみに生きるにあらずとイエスは言う。 病める時も富める時も共にあらん事をとも言う。愛するとは苦難を苦難とは感じたり
はしない。私はまだそう言う人には現実に会った事がなく、苦難を共にする気にはならないが、それが私の求める愛ではある。