命の言葉

学問も知識もない未開の地に住む人が哲学を語る時に命ある言葉に聞こえるのです。心に染み渡る様で、自由に生きる意味を知るのです。彼等のマナーは自然に対する愛なのでしょう。私が書物で学んだ事は私が自然から学んだ事を確かめたに過ぎない。私の好きな人は皆同じ自然を師匠としていたのでしょう。言葉の背後に雄大な自然があるのが解る。そう感じた時、私は言葉に嘘がないと思うのです。私が飼っている兎は何時迄も子供のままで、本当は年をとっているのだと思います。人間の様に心がある訳でもないのに、不思議な存在です。小さくて弱い生物ですが、背後に大きな自然を持っているのが私には解る。我が家にいるが兎は自然が生み出したままだから。人間がペットを可愛がるのも自然への憧れもあるのではないでしょうか。

家なき子

幼い頃、私が寝ていたのは、床下であり、昼間は浜辺でした。一応、帰る家はあるにはありましたが、かえりたくなかった。学校に勉強用具を全部置いたまま、家には帰らず学校には通っていた。私にとって学校は給食が食べられる唯一の場所だった。それだけです。大人になって家がないのは社会の一員でない様に扱われる人達がいるのは残念です。誰も好き好んで家なき子になる訳ではない。帰るべき家がなかった。帰っても傷付くばかりの家庭より、自然の中に住む方が私は幸せでした。自然は私を傷付ける事はなかった。私を傷付けたのは人間です。人間の中にある、悪意、優越感、差別、その他もろもろ。自然は私だけを愛してはくれないのですが人間の様に悪意もない。私が求めたら、与えてくれました。夏の暑い日には木陰を、空腹になると海が私の食卓になる。誰のものでもなかった自然が消えて行く。自然に育まれた私には誰のものでもないものに救われたのです。今日生きる為に必要な分だけを私は自然から頂きました。明日は又明日の分があると安心して、生きてこれたのです。人間の施しを受けず自然から与えられた事で私はひがむ事もなかった。人間の偽善的な愛
で汚れる事も。自然は私に何の見返りも求めはしなかった。惨めな思いもしなくて良かった。傲慢でもなかった。全ての命が巡っていただけです。私も自然とひとつになり、自然の恩恵に預かっただけです。今日生きて行く分だけで充分でした。

私の愛

私はヘレンと同じだったかも知れない。愛と言うものを知らないと言う点において。私の心に求める愛はあったが、それがどの様なものかを知らなかった。手当たり次第当たって砕けるしか知らないのだ。捕まえては心に尋ねる。心だけが知ってる。私は盲目の心の目だ。見る事の出来ない心だが、一度映した景色を忘れない。何時、何処で心は愛を知ったのだろう。心が穏やかになると私は辺りを見渡す。心が静かな時は望みが叶えられた時なのだから、辺りを見ても何等変わった事はないのだが、心は鋭い感性を持っている。多分何かあるのだろう。私は自分の心を信じる時が一番幸せなのかも知れない。私と心が一緒に過せる時間、場所。其処が愛なんだと思う。

間抜けな医者

間抜けは人間も記号では見ません。一人ひとり確かめるのです。人間を記号で見ている人からすれば、間抜けに見える事でしょう。間抜けは誰もが記号化したものを何度も確認するのです。まるで、螺旋階段を登る様に。それはとても立体的な世界なのです。鈍臭い訳では無く、人生を楽しむ知恵があるのだと私は思っています。私が間抜けと言う言葉を使う時は愛の代名詞でもあります。いい医者になられる事と期待してます。

愚かな子供

今にして思い出すと愚かなガキだった。父親が好きだったこんぺいとうと言う星の形をした砂糖菓子が私も好きだったが父親は少ししかくれなかった。ガキの頃に見上げた夜空にはこんぺいとうがいっぱいあった。田舎で、空にある星は降るが如くであり、私は小さな手をめいっぱい空に伸ばした。あれが最初の憧れだった。ガキだから梯架けたら届くと信じていたのもおかしいが、懐かしいでもない。何時迄憧れを追い掛けたか忘れたが、梯を架けたいとあれこれと考えていたのだけは覚えている。ガキはやっぱり間抜けだ。出来る訳ない事を考える。其処が私の間抜けな人生の出発点でもある。懐かしいイマジネーションの世界。