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そうか。そう言うものか。愛する人より自分のプライドの方が大事だとすりやそりゃ無理だな。
上手く行かない訳だ。私は愛する者を失うくらいならプライドはかなぐり捨てる方かも知れない。
今日もまた雨だ。あの日に帰ったような雨が降っている。
別れの辛さを忘れないで、とでも言ってるように降る。忘れたくても忘れられないものがある。心を通わした人との別れは身を切られるより悲しかったが、私は言葉には出来なかった。[後一年だけね]そんな約束があったから。
もう、これ以上我が儘は言ってはいけないのだとこらえていた。あんなに必死で追いかけたのに最後は受け入れるしかなくなる。
プライドでは無く、相手の気持ちを考えてのことだった。だけど、違うんだね。私とは違うんだ。
そこまで人を愛したりはしないんだ。
心が壊れそうなほどに愛したりはしないのかな。それも寂しい人生だが。どっちを取ると言われたら愛する方を取るかな。
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私の心ともうひとりの存在がある。分裂症でないことは分かっていて、不安にはならないが、私の心とは異なる意志を持っている。この意志を持った存在が私は好きでもあるし、畏敬の念さえ持っている。
私だけの心はサライをこよなく愛しているが、それさえ存在にとっては駒のようなものかも知れない。不思議な感覚を私は行ったり来たりする。
子供の頃からだから馴染んではいるが、時々怖い存在として意識する。サライも何らかの必要から私に引き合わせたような節がある。
寂しくなると私はサライと戯れている。少しの間人間らしい時間を楽しむのだが、長くはいられない。[何時までも遊んでいるんじやない]そんな声が聞こえる。存在のことに関しては人の理解は得られそうにないから何も話せない。いずれ何らかの意味が分かるんだろうと達観するしかない。そう言う意味では私には本当の自由はないのかも知れないのだが、多分私個人の自由より壮大で高慢な意志を持っていることだけは確かだ。サライとの時間は私が人間らしい心で愛する切なさを教えてくれる。このままでいいんだが、どうもそうは行かないようになっている[恋愛感情はおしまいだ]の合図がくると私は戦士に変わる。
さっきまで焦がれていた心は片隅においやられて、冷酷な指令が私を追い立てる。どちらの私も好きたが、あまりの過酷さに投げ出したくなるのも本音。
私に中心があるとしたら、その中心から凄まじい力で私と言う個人をブンブン振り回していると言う感覚だ。
だから私はスピード狂なんだ。ブレーキの付いていない車みたいなものだ。
梅沢富男が男だとは知っているが、私が男だったらやはりいっぺんは抱いてみたい女だと思う。
妖艶な女が脳裏に焼き付き離れない。あーこんな女を抱けたらなぁと夢想する。しかし、だ。人間の頭の中に夢想する女なり男がいるってのは楽しいものだ。
ナチュラルな美しさもいいが、桃源郷のような世界もいい。忘れられないいい女に梅沢富男がいる。私の女のレパートリーにも梅沢富男はいる。完璧な女だね。使い勝手の良さそうな、男を狂わせるにはもってこいの女。あのくらい化けなきゃ役には立たないのかもな。
そんじょそこらの女子では使いものにはならない。精々飯作って貰う程度にしか活用は出来ない。いい女はいい男にもなる。いわゆるハンサムガールだ。
好みの人間に変幻自在な女がいる。役者を超えた存在でなくては魅了されない。役者は形だけで妖艶まで到達するには芸術の域までいかなきゃなれないんだなぁ。女優の中には根本的に無意識の女の刻印があるんだろう。獲物が食らい付いて来たら素早く身を翻せるくらいのしなやかさがあれば、言うことなし。そんな女なら例え狸だったと分かっていても[化けてくれないか]と懇願するだろう。
化かされるのも私は好きだ。ありゃ狸だったと分かったとしても忘れられない女がいる。
私にとってはそれが梅沢富男かな。いい女だ。あの目がいい。上から下へと目線を落としていく動作は奈落への美しい誘いだ。こんな女と地獄に落ちるならいいか。
そう言う女に魅了される男にも度胸があるんだなぁ。女は男を狂わせるのがいいんだ。私はね。
サライ。やっぱり君のことを思ってしまう。空が遥か彼方まで抜けるように広がっている。何もかもが揃っていて最高だ。自然をこんなに美しいと感じれる私がいる。
私はふっとジョン、レノンと小野洋子を思い出してしまう。いや、その前にも想像したことがある。君と私が愛し合う場所は自然の中だろうと。
不謹慎かな。こんな素晴らしい青空の下で君との愛を楽しみたいと思う私はー。君に逢ってから私は嘘を付いてまで生きたいとは思わなくなった。
前からそうだったが余計ひどくなったってとこだ。
美しい感情は人の花なんだね。心は大地だ。その大地から精神と言う人間の道が伸びている。道の傍らには君に似た美しい花が咲いている。私の人生を華やかに飾る花々が。
日差しが眩い。大地が輝いている。大地に降り注いだ光がまるで妖精の羽根からこぼれ落ちる雫のように揺らめいている。自由であることが嬉しい。君を心に抱く自由は最高だ。

こら!馬鹿サライ。おめぇの作戦ではこちとらは命落とすのが先になる。
負け戦は嫌いだと何遍言ったらわかるんだ。おめぇが下手な常識を振りかざすとは思わなんだ。
急がば回れだ。明日作戦を変更しょう。何事も中途半端がいかん。いずれ死する身ならば潔くやろう。作戦の手を覆すのも武将としての器なんだ。勝たなきゃ意味ないんだ。
ものによりけりだが今回ばかりは負けたくないんだ。
おめぇに付き合って女に化けたのがあかんかった。
マジになりやがって燃えてんじゃないよ。化けの皮剥いだら何者でもありゃしない。戦いになれば女も武器になるが、武器である女におめぇが狂ってどうすんだよ。バカたれが!
おかげで作戦はぱぁーかよぉ。
やっぱ、先に一発やらせとけば良かった。免疫がついたら多少の色気には眩まなくなるもんだ。
肉体を餌におめぇを動かそうと思ったが、その前に狂いやがった。
こう言う場合どうしたもんかね。狂ったままほっといてもいいんだが、おめぇが必要なんだ。
私の相棒になれる器を持った悪等はおめぇくらいのもんだ。肝っ玉のちいせぇ野郎はいらん。
おめぇは本心を絶対漏らさないと踏んだから手を組んだんだが。色気に酔うとは思わなんだ。
こら!馬鹿サライ目覚ませ!
女じゃない。女の化けの皮を被った狸だと思え。分かったな!
疲れたから今日はノンビリ読書する。
追い詰められた時ほど冷静になるべし。


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