貴方と歩いた道

共に歩いた道は険しく、再び歩く勇気はないのに何故か貴方が恋しい。暗闇の中で感じていた温もりだけが恋しい。苦しみばかりの道なのに。忘れられない温もりがある。声も姿も見えず微かな温もりが鼓動のように語りかけていた。夜が明ける。貴方と過ごした夜が明ける。温もりだけが貴方の忘れもの。

再び私の旅が始まる。幸せを探す為にではなく、貴方を探す旅が。鼓動と温もりだけを残し消えた。何度もすれちがったのかも知れない。気付かず、互いにすれちがったのかも知れない。寄り添い、分ちあい、鼓動が奏でる子守唄。脅えていた夜に聞こえていた子守唄が恋しくなる。不思議ね。人は最後に故郷に帰るものなのね。凍てつく寒い夜に聞いた子守唄が恋しくなる。