異なる眠り

目を開けたまま寝てる。ぼんやりとした意識の遠くから聞こえる声を聞く。忙しく動き回っている時は聞こえない声を聞く。世の中に渦巻く雑音がまだない時間に、故郷の声を聞く。急ぎ足で駆け抜けた過去を振り返る。その道のもっと先に私がいる。置いてきぼりにされたあらゆるものたちが。価値のないものとして捨てたはずのものが。今では何処に捨てたのかさえ解らないのだが。微かな記憶をたよりに故郷への道を探す。

貴方自身の目

三才の時に実の親と別れ、五歳の時はチョツと風変わりな伯母と別れ、五歳から七歳の時は死にたい位悲しい思いで別れた人がいる。本当は小学校に上がる前に別れていたはずなんだが。今でも思いだす。置いてきぼりに慣れていたのだが、黙って私の前から消えていくのは嫌だった。その時は後一年だけね、と別れは先送りになり、死刑をまぬがれた気がした。でも運命は忘れてはいなかったのだ。一年の終りにはその日が来た。泣かなかったのは何故なんだろう。死にもの狂いで追い掛けたのに、黙ってあの日を受け入れた。最近、思う訳だ。私に対する優しさは引き延ばされた一年にあったのだと。子供ではあったがその人の優しさが一年を作ってくれた。私の願いを叶えてくれた人だった。

寒いでんな

外に出ると、あ～冬なんだと思う。思いきり寒さを感じた後の暖かさは格別。天国？空腹は最高のご馳走。友人は手際がいい。私が腹減ったと言うとアッというまに作る。やっぱこれがご馳走だ。仕事が好きなのか終わった後の解放感なのか、微妙。何が欲しいのかはぎりぎりまで行かないと解らない。死ぬかもと思うその瞬間に、なんだ～。案外単純なものかも。ただ味わい方が悪いだけかも。感度が悪いのは困るし、面白くなかろうが。

異星人

運動不足だ。散歩に行くつもりだったが、雨。図書館にて新聞を読む。日曜は人が多い。子供用のコーナで読む事にした。一才と五歳位の兄弟が不思議そうにこちらを見ている。子供が感じているものが本当の私。子供の目は誤魔化せない。言葉にはしないが、感じているものが本当なんだ。大人になると次第に見えなくなる。美しい鏡を無くした世の中で人はどうして自己確認をするのだろう。美しい心が見ているものが真実。

神を越える

理不尽な運命に対してイエスと応える事だ。無茶くちゃでんがな、そう思っていてもイエスと言い続ける。しかし、最近年のせいか、いささか疲れてきた。勘弁してくれないか。泣き言の一つでも聞いてくれたならいいのだが。神とは混沌の生みの親。何時何が起きるか解らない。賄賂を受け取る程甘くはない。しょうがないのよ。