貧しいのう

口を開けば、出てくるのはため息か文句、では話をする気にはならないと私は思うのだが。案外自分では気がついていない。注意されたらふてくされるのが、落ち！言われるのが嫌なら自発的にやるしかないと思う。人から言われるのが私は嫌いだからなるべく自分から動く様に心掛けてはいるのだが、それはそれで又言われる。結局、何してもお気に召さないのが人間なのか。悲しい人は奴隷を求める。愛を知らぬが故に。服従は愛の証にはならない。何時か気がつく日もくるだろう。自覚は必要だ。いいとか、悪いではなく自分の性格を理解すれば、自分の理解者になる。癖が洗練されたものが個性だと思う。

トリックスター

映画が好きで十代の頃は一人で映画三昧の日々。俳優に憧れたが無理な夢でしかない様に思い、諦めた。スクリーンの中に出てくる人は特別な存在であり、私には届かぬ夢だ。スクリーンの中での役者は諦めたが、日常が私にとっては舞台だと思っている。本音で人は生きれる訳ではない。演じながら本来の私は意識の深みで眺めている。迫真の演技をしらふで演じる。役者と言うより私はトリックスターに近い。悪魔の様な存在は現実を茶化す様に躍り出てくる。面白いのだが、困ってもいる。チョツとやりすぎではないか、疑問に思うのだが、大抵後の祭りになっている。私には面白いのだが現実には困る事の方が多い。役者に徹すると言う事は感情的では無理だと思うこの頃。感情でさえ作りものになる。迫真の演技に騙される人間の愚かさ。騙される人間の中には真実など知りたくはないのだろう。人の不幸が好きで、他人にふりかかる災いは暇をもてあましている人間には蜜の味。全ての人間ではないが、見抜けない人間の意識の浅さを嘆く。トリックスターは何かの本で知った。とても身近に感じた存在でもある。私が悪魔の子供と呼ぶトリックスター。命賭けの演技をやるだけ
の何等かの意味はあるのだろう。

だらしない空気

大の大人が三人家の中でゴロゴロしているのはなんとだらしない事か。逃げたいの一言に尽きる。だらしないとゆとりは違う。だらしない空気はよどみ流れる海を持たない。川は海に向かい流れ、何時しか海に辿り着く。私が愛した者達は海に集う。今は離ればなれであっても何時の日かあの故郷で又会える。愛している者を追い掛けないのは互いに約束の地を知ってるからに他ならない。信頼する者を束縛しないのは揺るがぬ信頼があるから。遠く離れていても何時か会える。何の根拠もないのだが、私が愛したものは約束の地を知ってる。道は違っても私達はいずれ出会う。君は今どの辺りを歩いているのか。胸のうちで問掛ける。この穏やかな信頼に満ちた胸に問掛ける。私達は会話を忘れた訳ではない。互いに知り過ぎていて言葉は虚しいだけだと知ってるだけだ。

無力な者の怒り

棘の道を黙って歩こう。現実は何時も私には優しくはない。ビィクトルが堪えた様に、イエスが歩いた様に。無言で私の運命を歩こう。何時しか優しい死が微笑むまで。私が望んだ穏やかな生活はあらゆる屈辱に堪える事でしか叶えられないのか。現実に私が望む生活と貴方が私に下す命令との食い違い。貴方は何を考えているのだろう。私の疑問に貴方は答えてはくれない。激しい衝動となり私を、現実を貫く。貴方は何が言いたいのか、望みなのか。私に解っているのは貴方が魂の中に息づいている事だけだ。イエスが磔になってまで守ったもの。私にも死ねと言うのだろうか。イエスの死を私は理解出来ない。一人の人間を犠牲にしての愛を喜べない。他に道はあるのではないかと考える。誰の犠牲も要らない道が。時折私はイエスが十字架を背負い一人歩く寂しい姿を見る。歩く必要はないと私が言うとイエスは微かに振り返り私に優しい眼差しを見せる。私には止める事が出来ないのだと知る。

自由と愛へ

こむつかしい題名だが私にとっては単純な願いでしかない。誰にも話す気にはならないが、たまに本やテレビで同じ思いと願いを知る。何処かに考え、思い、願っている人もいるのだ。私には遠く離れた友を見る思いがある。孤独になる時、私は外を見ない。深海魚のように命の深みに身を潜める。この馬鹿げた世の中を虚ろに感じながら深海で薄目を開けている。現実と人々が呼ぶこの世界を私は離れる。静かな海の底へと逃れ、過ぎ去った時と語る。あるいは会った事もない人を思う。ココ、シャネルやマザーテレサ。ビィクトル、フランクル。イエス、キリスト。名前をあげたらきりがない。ここにはいない人を偲ぶ。