21世紀に向けて

貴方が今置かれている苦境。それ以上の苦境に耐えた人間が存在したのだと考えて見ればいい。そうすれば、貴方の苦しみも少しは軽くなると言うものだ。ほんの少しの想像力を働かせるだけで、世界の一部である苦しみに慰められるだろう。それは、よそ事ではなく、今まさに貴方の頭上にふりかかりつつあるのだと。[私は何の罪も犯していないのです]その祈りは届かないでしょう。貴方が善人であろうが、悪人であろうが、自然の巡りは理不尽に無慈悲に巡る。苦難の前で、悪人に対しては[自業自得だ]、では善人に対しては[何の罪もないのに]と言う言葉は、効果はないだろう。苦しみに耐える力、悲しみを乗り越える強さを身につける方が得策と言うもんだ。若い時は心も体も柔軟で辛さも難無くものとする。 幸せに馴染むのは後からでも良い。努力もなしに、ドップリ、ふやけるまでつかっていられるだろう。 地獄に咲く花が私を誘う。閑な平野に咲くより鮮やかな輝きをもち、誘う。近付いてはならぬ花よ。はるか彼方で永遠を語る。夜空を明々と照らし、空高く輝く星より眩い光。その身を焦がしつつ
、闇夜を照らす。私も歩こう、貴方が歩いた道を。自らの命に炎をともし、歩こう。

君の後を

こんな時代だけど笑顔でいたなら、きっと、君の後に幸せが付いてくる。人間の豊かさは経験からと思うから、何時か、笑って振り返る日が来る。一人一人、苦難の乗り越え方は違うだろうが、一人で乗り越える苦難は人間に深みと広さをもたらす恵みとは考えられないだろうか。

お迎えでごんす

風邪、ひいたのか、体調が悪い。横になっていると意識がとおのく。[お迎えでごんすか]どうでもいいが、しんどいのは嫌じゃ。どっちつかずも嫌じゃ。手塚先生のキャラクターに出て来た、ツギハギが間抜け面で、目の前をひょいひょい、走っとる。私は最後まで面白い人生だったと言うだろう。体調わる～う。吐くど～

形なきもの

目に見える場所で、形のある物を売り、私は日々の糧を得ていた。そうやってしか生きて行く事ができなかったからだ。内心は[形のないもの]への憧れを持ちつつ。形の中に私はそっと形のないものを忍ばせた。それは客にとても喜ばれていた。だか、それが何であるか気がついている客は殆んどいなかった。コーヒを飲みに着たついでに、客はおまけを貰った気分で帰る。誰も気がつかない。[心遣い]と言う、目に見えないプレゼント。そして、また、当たり前のようにコーヒ代を置いて帰ってゆく。目に見えないものは当たり前の付随物になり、無意識の欲求はエスカレートし、私はヘトヘトに疲れきって店を閉めた。町を歩いていると昔の客に会う。閉店を惜しむように語る。人の優しさはただではないのだ。泉の水も何時か干からびて行く。その泉も、世間から遠く離れた地中深くにしか流れてはいない。

暗い世界

真っ暗な中に私はいた。世界は暗い日の連続だった。その日、私は畑の畔を歩きながら、何故こんなに暗い日が続いているのか、と考えていた。灰色の毎日に嫌気がさしていた。長い事、トボトボと畑の畔を歩き、ある一つの原因を見付けた。外の世界は今までと何ら変わってはなく、変わったのは[私の心]だった。好きな人と別れた事が私の心に重く、のしかかっていたのだ。暗黒から抜け出す為に、道行く人に笑って挨拶をした。少しだけ世界は明るさを取り戻したが、あの悲しみが、私から消える事はない。自分で自分を励ます為に私があみだした[生きる為の良き方法]に過ぎない。何時までも悲しみに浸っている訳には行かない。特に、私の場合は、めまぐるしいほど変わる環境の中を必死で泳がざるを得なかった。何時までも一つの悲しみにすがりつき、泣いている事は許されなかった。環境は不条理な難問を次々と投げ掛けてくる。私自身の心の声など薙ぎ倒していく。そのうち、私はあらがう術を捨て、流れに身を任せる事を覚えた。泳ぎさえ知らぬ幼き者に、こうするしか方法がない。溺れ死ぬか、運がよければ、いずこかの岸に辿り着くだろう。
そこに私の意思や心は全く意味を持たない。現実に牙を向けたところで勝ち目はないと私は踏んだ。長い沈黙の時間が過ぎた。