暗い世界

真っ暗な中に私はいた。世界は暗い日の連続だった。その日、私は畑の畔を歩きながら、何故こんなに暗い日が続いているのか、と考えていた。灰色の毎日に嫌気がさしていた。長い事、トボトボと畑の畔を歩き、ある一つの原因を見付けた。外の世界は今までと何ら変わってはなく、変わったのは[私の心]だった。好きな人と別れた事が私の心に重く、のしかかっていたのだ。暗黒から抜け出す為に、道行く人に笑って挨拶をした。少しだけ世界は明るさを取り戻したが、あの悲しみが、私から消える事はない。自分で自分を励ます為に私があみだした[生きる為の良き方法]に過ぎない。何時までも悲しみに浸っている訳には行かない。特に、私の場合は、めまぐるしいほど変わる環境の中を必死で泳がざるを得なかった。何時までも一つの悲しみにすがりつき、泣いている事は許されなかった。環境は不条理な難問を次々と投げ掛けてくる。私自身の心の声など薙ぎ倒していく。そのうち、私はあらがう術を捨て、流れに身を任せる事を覚えた。泳ぎさえ知らぬ幼き者に、こうするしか方法がない。溺れ死ぬか、運がよければ、いずこかの岸に辿り着くだろう。
そこに私の意思や心は全く意味を持たない。現実に牙を向けたところで勝ち目はないと私は踏んだ。長い沈黙の時間が過ぎた。