肉親

読んで字の如しだなぁ。血と肉は同じだが、後は何の意味もない。 下宿のおばさん。 電車の中で会った知り合いに母の事をそう言った。母は怒っていた。私が母親と認めていないのが嫌だったんだ。しかし、彼女は本当に母親らしくなかったのだから仕方ない。彼女にとって子供は自分が生んだ物に過ぎない。自分とは違う考えを持つ事を許す人ではない。今もそれは変わらない。年と共に頑固になるばかりだ。思考の習慣が出来上がって、そこから一歩も踏み出せない。毎度、同じやり取りが続く。進展のない会話にはウンザリするのだが、彼女には彼女なりの私への愛があるのだろう。私は彼女の愛を受け入れる器でしかない。古びた愛の意識。 どんなに美味しい料理も毎回だと飽きてくる。母の愛は支配でしかない。否、血と肉の牢獄か。