憧れた存在

自意識が無かった。否、通り越して私自身さえ無かった。私が憧れた人間は自意識の塊の様な人。憧れとは違うな。何故なら私が安らぎを覚える人は反対の人だ。無いものねだりに過ぎない。自意識の代わりに感度の良さが私の取り柄だったが、これは厄介な代物だった。苦しみは皆ここから、生まれたといっても過言ではない。心を閉ざす技術を身に付けたのも、感じやすい心を守る為にしてきた事。その技術を教えてくれたのが、自意識過剰の人間。ボディスーツを纏うが如く、自意識を纏う。誰にも傷付けられない強靭な自意識。ナルシスト。生きながらにして、死んでいる。