不整脈と私

誰にも分かってもらえない苦しみこそ私を培ってきたものだ。今はそう思える。病院に行くと大袈裟に扱われるより、ゲラゲラ笑いながら対応してくれる看護婦さんの方がいい。泣いたって笑ったって治る訳じゃない。ただでさえ苦しいのに目の前で悲壮な顔されたらかえって苦しみはますばかりだ。すっかり馴染みになった不整脈。爆弾だ。 不整脈が治まると心臓の規則正しい動きを有り難く思う。心臓が勝手に動いている時はありがたみなんて分かりはしない。 誰にも分からない私だけの苦しみは私の親友のようなものかも知れない。言葉ではいい現せない喜びや苦しみこそ私だけの宝物。穏やかな心臓の鼓動を感じながら、平和だねなんて思う。誰とも分かち合えないものこそ、私と言う人間の世界への案内であるのかも知れない。 個性と言う言葉の持つ一つの側面には悲しいかな、誰にも理解されない事柄が含まれている。一人で歩くしかないから個性にもなるのだろう。 険しい道を歩いて来た者ほど優しい。人間は皆一人で苦しみを抱え生きざるを得ないのだと知っているからだ。ゲラゲラ笑う看護婦さんも多くの患者に接して来て、替わってあ
げれない苦しみを知っているのだろう。苦しみを取り除いて欲しいとは望まない。誰かが、その胸のうちで頷いてくれているだけでいい。私の中の神様と同じように。