愛を込めて

眼鏡ザル。名前を覚える気にもならない。取り柄もなさそうだし、どうでもいいのだが。腹黒い所だけは認める。多分、自分では善人とでも思ってんだろうな。完璧な人間はいないと常々思う私にはうっとうしい存在だ。腹黒い人間も悪くはないが自覚していれば、それなりに面白い。ソクラテス君は素晴らしい。汝自身を知れ、とのたもうた。紀元前５００年前に生まれた言葉だが、今なお錆びる事なく生きる。あれから２５００年が過ぎて、今だに人間は変わらず愚かだ。ますます愚かになって行く。人間は考える葦であると言ったのはパスカルであるが、文明が進むに連れ、人間は単なる葦になって行く。システムの中で飼い馴らされ、自分の頭では考えていない。システムの指示で動く。それが文明人の証の様に錯覚している。自分で考え行動するには責任が伴う。要するに責任取りたくないだけなんだ。面倒は避けて通る。それも人生だ。ただ、つまらない人生でしかないのだが。

生きる

もの皆、沈黙のうちにありて、祈りの日々は過ぎ行く。痩せ衰えた手を空に向け、流浪の果てに見るは、幻。君も夢見るだけの者となり、惰眠を貪るか。もはや、大地に恵みは無く、乱るる心に寄るべはあるのか。苦痛、それこそが人生を豊かにする。追い求めずとも君を訪ねて来るものを受け取るがいい。拒まぬ者にこそ、語る。今だかって語られず、秘められた物語りを。数万年の時の彼方より、流れ来るものは止むを知らない。狂い人と道化師は知っていても、言わない。人生は残酷だ。君は哀れむ事で人生を味わい損なった。

欲望

物に限らない。愛されたいと思うのも欲望なら偉くなりたいも同じ。何か、意識しなくても愛される時は愛されるし、偉くなろうと思わなくてもなる気がする。人間も木に似て、誠実に生きていたらそれなりの成長がある。無理すれば自分自身から遠のいていくだけだ。自然の木と同じに人間にも資質はある。どんな花が咲くか解らないが、心だけは清くありたい。環境で育つものが違う様に人間は心が大地に思う。何にせよ環境は大切だ。自身の心を見ているとつくづくそう思う。これとて、随分回り道をして解った事ではあるが。良いも悪いも解っているのがいい。人生で言うなら地獄も天国も知っている方が豊かなんだと思う。地獄は味わいたくて味わった訳ではないが。ささやかな事にも感動出来、感謝できる心境が好ましい。そう言う意味では地獄を見るのも悪くはない。世の中には地獄と天国もある。死後にでは無くこの現実に歴然と存在する。人間によって産み出された地獄が最も醜いのたが、それも人間の果てしなさから来るのだろう。地獄も限界無く天国も限界なし。あらゆる可能性が人間にはある。

心

心が満ちたりていると金は程々で足りるものだと思う。パンを焼きながら花の手入れをし、冬に向けてビオラを植える。何時でも花が咲いているのがいい。物欲が自然に無くなって、気がついたらほんの僅かの糧と花、時々好きな絵を描き、本を読む。友人もいたらいたで構わないが、いなくても一向に構わない。一人も楽しく、気の合う友人も又いい。無理せず自然体で生きていると、それだけで幸せを感じる。本当に必要な物は僅かで、だからかも知れない。心に余裕が生まれる。ただ一輪の花が心の中に咲いている。そんな所だな。時折吹く風や雨、自然にあるものに何と無く幸せがある。単純を複雑にしていたのは欲望なんだろう。この心の中にあり、何処にも行かずここから眺める景色がいい。

木になりたい

木陰を作る位の大きな木がない。あっても大抵神社の中だ。私が好きな木は何気無い道の傍らに立つ木だ。舗装された道には個性など生まれる訳がない。立ち止まって眺めたくなる様なものも無く、ただ目的に向かいひたすら通り過ぎる。町には私の好奇心を惹きつけるものはない。人間もつまらない人が多い気がする。これを安定と言うのか。ただ退屈なだけだ。暫く何も考えず働こうと思う。考えてもどうしようも無い事ばかり考えていると生きているのが苦痛になる。動いていたら苦痛も和らぐ。誤魔化しているのかも知れないが。憧れを捨てられないから、苦痛に悩む。何時の日か私自身のオアシスに辿りつけたらきっと生きて来て良かったと思うのかも知れない。今は思えない。もしかして辿り着かないかも知れない。