笑顔の下に

虐待を受けた子供達がいる施設に知人が行き、逆に勇気を貰ったと嬉しげに語っていた。見抜けない傷がある。隠したいと言う思いから生まれた笑顔。その下では凍えた心がある。知人に悪気はないのだが、知人はそんな世界を知らないだけ。素直に受け取っただけ。

学べないもの

詩人に学校はない。道もない。導き手は神様。人間が通らない道を歩く。ときには砂漠を。ときには鬱蒼と茂る薮の中を。好奇心が先だったのか、人間が嫌いで避けていたのか、定かではないが気がついたら、帰り道は闇に閉ざされていた。見える道は私の心に残された小さな足跡。おぼつかない足で闇の中を踏みだす。大地を感じる度に安堵する。一歩間違えると奈落の底にまっさかさま。

風来坊

朝、母が仕事に出掛ける。何時もと変わらない朝。母にとっては同じ朝だ。私の気持ちに気がついていない。母が出掛けると、テーブルに置き手紙を残し私は旅に出る。あてどなくさすらう。異国の地で寂しさを堪える。忘れない為に。私は一人なのだと言う真実を忘れない為に。時折ブラッと帰る。虚しさを味わう為に。

遠くを見つめて

未来に不安を覚え、今だ見ぬ世界に脅える。遥か彼方を見据えると死が微笑む。懐かしい友の顔をして。目をそらし、皮肉な笑いが脳裏をよぎる。そうだね最後はお前の元に私は帰る。私の心配やら不安はお前の前ではただの道に過ぎない。

おめぇもか

自分のものは自分のもの、ひとのものも自分のもの。人の好意はただじゃない。と言ってた知人がいた。マザー、テレサは優しい人間だったが本当に救いが必要な人に手を差しのべたと私は思う。何の利益も得られない人にこそマザーは優しかった。私の今までの経験からすると、損得で動く人間は見返りのある人間にしか興味がない。物に限らないのだが、見返りとして、優越感を味わうとか。色々ある訳なんだが、心は複雑な領域だ。優しさの深淵を覗いて見ると案外、自己満足だったりする。威張っている人間の中には卑屈が隠れていたりもする。私はこの不思議な人間の深淵に恋した人間でもある。無意識に閉じ込められた邪悪な存在が翼(表現)を得るとドラゴンになる。