同じ気持ち

仕事が終わると私は帰る。何度も手をふる。一緒に帰りたいと呟く声を振り切り病室をでる。 私がしていることはかえって苦しめているたけに思える。少しの安らぎを与えたとて最後は辛い思いになる。もう行かない方がいいのかも知れない。神よ。応えてください。私は迷っています。どうにも出来ない中途半端な思いはかえって傷つけるだけなのでは。全ての人に大切にされますように。祈るしかないのです。

風のように

名前を覚える時間もなく、別れがやってきた。記憶に残っているのは仕草だけ。風が通り過ぎるように脳裏をよぎる笑顔と穏やかな表情に慰められる。忘れかけてはよぎりその繰り返し。風がふくと細い糸が微かに揺れ、記憶を揺さぶる。 祈り。真剣に祈った事が過去に何度かある。すがるような思いで。だが今は無の心で祈る。願いでもなく希望でもなくただ祈りだけを繰り返す。心が穏やかになるまで祈る。

旅

木の葉から一滴のまぁるい水が明け方に静かに大地に落ちる。しばし、大地でくつろぐや、小さな流れにのり、海へのなだらかな旅に身を任せる。 広い海へと向かう。 そこからさらに広い空、否、果てしない自由へと帰る。 命あるものたちの旅。巡り巡り、愛と自由へと帰る。 全てが一つに溶け込んでいた世界では誰も孤独に泣く者はいない。

神頼み

運任せと言うが、それ嫌い。どうせなら神頼みがいい。いるかどうか分からないが人間よりは信頼出来る。 神様よ、あんたは昔私に呟いた事があったなぁ。 ー私の所に時折帰って来るのはいいが、おまえの神は人間の中にあるのだとー。多分、人間の中の神は笑顔にあるんだろう。最近そう思う。 年をとり何も分からなくなった人間にも笑顔だけは残してくれている。どんなにボケようが人の心だけは感じれるのだろう。私も彼らの前では純粋でいられる。穏やかな気持ちでいられる。下手に理性があるが故に人は争うのかも知れない。 誰にでも伝わる愛は笑顔と優しい空気なんだ。理屈じゃない。 どうしてそんなに優しいのと聞かれ驚いた。食事さえままならない不自由になった体の中で魂は生きている。神よ。私はそこにあなたを見るのです。

神よ

平和的な解決を望みます。その為にこの身を捧げているのです。争いから生まれるものは再び同じ過ちを繰り返すものです。穏やかな解決を望むにはこの身を捧げるしか術はありません。 子供の頃私はあなたに願い事をし、取り下げました。今、改めて真実の私の願いを申し上げています。言葉にせずともあなたは私の心のうちをご存知と思います。私がこの望みを抱く事をあなたは願っていたのだと思います。これが私の最も深く真実の願いです。他には望みはしません。