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父が逝った。父が残してくれた愛は泥沼から咲く蓮の花に似ている。
天真爛漫なひまわりとは異なる悲しい花だ。
その花に手を触れる者はいない。誰にも手折られはしない。たった一輪しか咲かない花はあなただけの人生に咲く花。

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幼い頃にあなたは私に言いましたね。[笑顔でいなさい]と。心がどんなに暗く悲しみに暮れようと笑顔を忘れてはいけないのだと。
でもそれは私の喜びから溢れた笑顔ではない。
あなたと約束をしたからに他ならない。単純だけど難しいのだと思う。
振り返り思い出す笑顔の先には何もない。対象のない寂しい笑顔。
それでも誰かが喜ぶならと。求めるものを与える事でしか満たされない心がある。私が求める愛を誰が知るだろう。
伝えたいけど言葉にはならず、微笑みつつあなたに贈るしかない。
君の笑顔が一番素敵だよ。それがあなたの本心なら、あなたは私が持ち続けた愛の意味を知っているのでしょう。
私の笑顔の先にはあなたがいる。
どんなに遠く離れていようと私が見つめるのはあなただけ。 幼い日に聞いた神様の言葉はあなたへの道しるべ。
神のご加護を!
あれがあなたの言葉ならばと思う。
環境を選んで生まれて来れるなら、なんも面白くはない。
選べないから不思議な物語も出来る。人間ならではの物語。私は自分の愛する人は自分で見つける。自分の幸せも。
親父の所に生まれて良かったよ。
振り返り、見る景色はまさに芸術としか思えない。こんな経験意識して出来るものではないから、やっぱり自然はたくましく、美しい。
私のユーモアのセンスには親父の冷淡さが混じってる。
親父の背中はいつも陽炎のように揺れていた。
妙なもんで、そんな親父が愛おしくもあった。ユラユラと月夜の道を親父が歌いながら歩いている。歌っていると嫌な事を忘れるね。
でも私は大切なものまで忘れたりはしない。そこが親父と私の違い。
父親らしい事は何一つ無かったなぁ。
葬式に行かなきゃ後悔するかも知れない。しないとは自信を持って言えない。
何時だって自信があって行動している訳じゃない。今、自分の心に従ってるだけ。それで後悔するなら仕方ないと思っている。
親父の事は思い出になっていく。私の心にしかないものがたくさんある。親父もそうだ。
心からの思いは必ず伝わる、と言うのが私の信念。
[いつか、貴方を理解する人に会う]と言われ十年以上の月日が流れた。
雑誌の占いコーナーで[今年は良い人に恵まれ、結婚を意識するでしょう]などと書かれていても、そんな人に会うような予感は全く無く、心当たりもない。
そんな矢先、[この人素敵だなぁ]と、密かに意識するような人に会う。
思いも寄らない場所での出会い。
こんな所に来るのは、くだらない連中ばかりだ。そう思いつつ友人に誘われるがままに何となく行くようになった。
誰とも話たくはないが、退屈から何となく行くようになった。
そう言えば、十年前の不思議な出会いも直接ではなかった。最初は彼の奥さんとの出会いからだ。
彼女に関してはさほど興味はなかったが、退屈と暇が嫌いな私は彼女とつまらない会話で時間を潰していた。
あれも無駄じゃなかった。
彼女を通しての出会い。
しかし、この出会いは見事に惨敗に終わったのだが、自分の好みを知るきっかけにはなってる。
出会うべきして、出会うなら後は運任せ、神頼み。
そんな余裕を持てるようになったのも十年前の失敗があっての事。
十年振りの心の会話。
何もかもが空虚に見えていた。心臓は動いているのに死んでるなぁー。
そう思いつつ、どうせ死ぬなら、心と一緒に死のうかと思い始めた矢先での出会い。
あなたはどんな思いで私を見ているのだろう。
十年前に言われた言葉が蘇る。
[僕の事どう思った?]
今度は私が聞きたい[私の事どう思った]
あなたとの会話は幼い頃の神様との会話に似ていて懐かしい。姿は見えないのに思いは溢れる。


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