野良猫

同じなんだなぁ。
行く所も居場所も無く、街をブラリブラリしていたら、どっかの家の人が拾ってくれたって感じかな。
私は野良猫かぁ！
そんなとこもあるなぁ。どうも自分の意志で動いてるんでは無く、なんて言うんだろうね。
寂しがり屋で人が好きで。男たちが居酒屋で酒飲む気持ち分かるなぁ。
暇があると何となく人の集まりそうな場所に行く。楽しそうなところかな。ワイワイガヤガヤしてんだけど、一人になれる所。関わるんだけど、アッサリバイバーイが言える所。なんか、いい場所みっけた！って気分。
遊びにきたぁー遊んでくれー。
そう、私は粘れない人なんです。来る者拒まず去る者追わず。その癖に好きなものの側を離れないってのもあるかな。好きなものにしか心が行かない。
何となくなんだが、神様、あの人に頼みに行ったんか。
野良猫預かってくれって。
すごく居心地いいから、そうなんかなって。
多分、こんな話世間様が聞いたら気が違ったと思うだろう。運命は人が運んでくるのですよ。類は友を呼ぶと申します。身辺整理をなさった方が身の為ですわよ。

モナリザの微笑み

ほくそ笑みつつ、あなたの密かな企みを眺める。
神の目を持つ人よ。全てを見通している人よ。
私も知っている。神が何を企んでいるかが。
欲望に踊り狂う群集を冷ややかな顔であなたも見てる。
神が私に仕掛けた愛の罠。手口が全く同じなのね。
今日は書物を手に、あなたのイタズラっぽい罠とやらを眺めていましょう。
忍び笑いをもらすのです。密かに。
モナリザの秘密は口元にはないのです。目をごらんなさい。あれが真実。
覗き込みなさい。愛と死を飲みなさい。瞳の奥に続く永遠の営みを。
はるか彼方から訪れる神秘を孕むモナリザの瞳を。
覗きなさい。
全てを知る者にとって、人間の行いは滑稽なものです。
けれど漏らしてはなりません。
踊りなさい。踊りなさいよ。狂わんばかりに踊りなさい。
上手くなったら最高のダンスを教えて差し上げます。

物好き

大抵の男は下心で寄ってくる。何も要求しないってのは、かえってこぇえな。
交換条件なしが一番怖いと思う私がいる。でも不利になれば逃げ足早いもんね。
なんの条件も出さないなら、勝手に考えてしまうのも私。
要するに店に客がいっぱい入ったらいい訳よね。と言う訳で、一芝居打ってる最中。いい女に化けて男連中をわんさか連れ込んで来たる。
そう言うの得意なの。男の弱点は知り尽くしてんのよ。
てめぇが焼き餅焼くくらい仲良くしてあげる。
客と私どっちにする、なんてね。
そう言うのも好きだなぁ。
どっちもがいいよね。
しかし、おめぇは犬か！あっちこっちにマーキングしゃがって！そこら中にマーキングしてあっから迷子になった。
ついでに笑っておいた。クスクス笑いが一番面白い。私、ムッツリスケベなんだわ、きっと。
秘密の匂いが好きなの。

共犯者

おい！俺が仕掛けた罠におまえがはまってどうすんだよ。
言ったろうが、あそこにゃ欲望につられやってくる人間を落としめる罠を仕掛けたと。
本当におまえは好奇心が強いなぁ。俺が仕掛けた罠が知りたいなら、遠目に見てりゃいいんだ。いちいち自分で確かめるんじゃない。
絶対人間には教えるんじゃないよ。知らん顔しとけ。すっとぼけ顔で素通りしてりゃいいのさ。
俺を信じろ！
見てろよ。殺さない程度が一番効果的なんだ。
後は地獄だ。
地獄も私は好きだけどな。なんでも覗きたがる私は神様の心も悪魔の心も知っている。知らないのは手口だけ。毎回違う仕掛けをするものだから、つい興味が湧いてきて罠にはまるのだ。
君子危うきに近寄らず。私間抜けなのねきっと。

不死鳥

愛は死ぬ事のない命なのです。万が一死ぬのなら、それはまやかしに過ぎなかったのでしょう。
愛は決して人を不幸にはしないのです。信じなさい。命かけて信じなさい。
全てを捧げる覚悟で信じなさい。
恐れる必要はないのです。恐れるなら自身の疚しい心を恐れなさい。
愛は美しい心にしか住まないのです。優しき心根が愛の大地です。
愛を疑う前に自身の心をみつめて下さい。自身の罪を愛になすりつけてはなりません。憎しみで心を曇らせては太陽も見えないのです。
雨の日も太陽は輝いているのです。見えないだけで消えたりはしない確かな存在があるのを信じなさい。
感じなさい。心を穏やかにしている時、聞こえる声を信じなさい。平和を愛するのです。
心を濁らせるものからは逃れて、しばらく身を隠していなさい。時がくれば再び扉は開かれるのです。真の自由に向かって。
受け取りなさい。あなたに相応しい愛を。誰も愛に傷ついたりはしない。
真実のみを愛する女神のくちづけは身も心も溶かす魔力を持ちます。引き裂かれた愛を癒やすものは優しき心根なのですよ。
その心根に勝るものなどこの世界にはないのです。
与えなさい。全てを与えなさい。惜しまずに与えることを学びなさい。